胸やけをくり返す方は要注意。胸やけの原因は胃酸の逆流？原因・治療法を医師が解説

はじめに

食後に胸のあたりがムカムカしたり、喉の奥が焼けるような感じがしたりする──それは、多くの方が経験する「胸やけ」という症状です。
一時的な不快感と思われがちですが、くり返す胸やけの裏には“胃酸の逆流”が関係していることが多く、放っておくと逆流性食道炎などの病気につながることがあります。

特に、脂っこい食事や早食い、夜遅い時間の食事、ストレスの多い生活などは、胃酸の分泌を増やしたり、食道への逆流を起こしやすくしたりします。
最近では、若い方から中高年まで幅広い年代で胸やけに悩む方が増えており、日常生活や睡眠に支障をきたすケースも少なくありません。

この記事では、胸やけの仕組み・原因・治療法・生活習慣でできる対策をわかりやすく解説します。
「食後に胸がムカムカする」「薬を飲んでもすっきりしない」という方は、ぜひ最後までご覧ください。

胸やけの仕組みと起こる原因

胸やけは、胃の中の酸（胃酸）が食道に逆流し、粘膜を刺激することで起こる症状です。
本来、胃酸は食べ物を消化するために欠かせない働きをしていますが、食道にはその強い酸に耐える防御機能がありません。
そのため、胃酸が上がってくると、胸の奥や喉のあたりが「焼けるようにムカムカする」「酸っぱいものが上がってくる」といった不快感を感じるのです。

胃酸が逆流してしまう主な原因は、胃と食道の間にある“下部食道括約筋”のゆるみです。
この筋肉は、通常は食べ物を胃に送り込むとき以外はしっかり閉じて逆流を防いでいますが、加齢や肥満、猫背・前かがみ姿勢、暴飲暴食、ストレス、喫煙などによって緩んでしまうことがあります。

また、脂っこい食事・甘いもの・アルコール・コーヒー・チョコレートなどは胃酸の分泌を増やしたり、筋肉をゆるめる働きがあり、胸やけを悪化させる要因になります。
さらに、夜遅い食事や食後すぐに横になる習慣も、胃酸が上がりやすくなる原因の一つです。

こうした生活習慣の積み重ねによって、胸やけが慢性化し、逆流性食道炎へと進行してしまうこともあります。

胸やけに関係する主な病気

胸やけの多くは、胃酸が食道へ逆流することで起こりますが、その原因となる病気はいくつかあります。ここでは代表的な疾患を紹介します。

①逆流性食道炎（ぎゃくりゅうせいしょくどうえん）

最もよく見られる胸やけの原因です。
胃酸が食道に繰り返し逆流して炎症を起こす病気で、「ムカムカ」「のどの違和感」「ゲップ」「酸っぱい液が上がる」といった症状が特徴です。
放置すると食道の粘膜がただれて「びらん」や「潰瘍」ができることもあります。

②食道裂孔ヘルニア（しょくどうれっこうヘルニア）

胃の一部が横隔膜を通って胸のほうへ飛び出してしまう病気です。
この状態になると、胃酸が上がりやすくなり、慢性的な胸やけや逆流症状を引き起こします。
高齢者や肥満体型の方に多く見られます。

③薬剤性食道炎

一部の薬（抗生物質、鎮痛薬、鉄剤など）が食道に長くとどまると、粘膜が傷ついて炎症を起こすことがあります。
服薬後にすぐ横になったり、水分を十分にとらない場合に発症しやすいのが特徴です。

④胃・食道がんなどの器質的疾患

まれではありますが、腫瘍やポリープなどで食道や胃の通り道が狭くなり、胸やけやつかえ感を起こすことがあります。
症状が長引いたり、体重減少を伴う場合は、早期の検査が必要です。

⑤機能性ディスペプシア（胃の働きの異常）

内視鏡で異常がなくても、胃の動きや感覚のバランスが崩れて胸やけを感じることがあります。
ストレスや自律神経の乱れが関係しているケースも少なくありません。

このように、胸やけはさまざまな病気が背景にあり、「単なる胃の不快感」とは限りません。
原因を正確に突き止めるためには、内視鏡検査などの専門的な診断が欠かせません。

放置してはいけない胸やけのサイン

胸やけは一時的な症状のように思われがちですが、くり返したり、長期間続く胸やけには注意が必要です。
放っておくと、食道の炎症が悪化したり、がんにつながるリスクが高まることもあります。
次のような症状がある場合は、できるだけ早めに消化器内科を受診しましょう。

①胸やけが週に2回以上ある

市販薬で一時的に落ち着いても、何度も胸やけを感じる場合は逆流性食道炎が進行している可能性があります。

②胸やけ以外の症状もある

喉の違和感、声のかすれ、咳、胸の痛み、食べ物のつかえ感などがあるときは、胃酸がのどまで逆流している「咽喉頭逆流症（いんこうとうぎゃくりゅうしょう）」の可能性があります。

③症状がだんだん強くなっている、体重が減ってきた

食道や胃の炎症、潰瘍、腫瘍などの器質的疾患が進行していることも考えられます。
特に、飲み込みづらさや血の混じった吐き気があるときは、すぐに検査が必要です。

④夜間や朝方に強いムカつきで目が覚める

寝ている間は重力の影響で胃酸が上がりやすく、粘膜を長時間刺激してしまいます。

胸やけは「放っておいても治る」と思われがちですが、慢性化すると再発をくり返します。
2週間以上続く場合は、自己判断せず専門医に相談することが大切です。

胸やけの検査方法

胸やけの原因を正確に調べるためには、内視鏡検査を中心とした専門的な検査が必要です。
単に胃酸が多いだけでなく、食道や胃の粘膜に炎症やびらん、潰瘍、腫瘍がないかを確認することで、適切な治療につなげることができます。

①上部消化管内視鏡検査（胃カメラ）

最も基本的で重要な検査です。
口または鼻から細いカメラを挿入し、食道・胃・十二指腸を直接観察します。
粘膜の炎症やただれ、潰瘍、ポリープ、がんの有無を詳しく確認でき、必要に応じて組織を採取して病理検査を行います。
当院では、鎮静剤を使用した苦痛の少ない検査にも対応しており、「眠っている間に終わった」と安心される方も多くいらっしゃいます。

②バリウム検査（食道透視）

バリウムを飲んでX線で観察することで、食道裂孔ヘルニアや形の異常、狭窄などを確認できます。
内視鏡検査が難しい場合の補助的検査として行われます。

③ピロリ菌検査・血液検査

胃の炎症や胃酸分泌異常の背景に、ピロリ菌感染や生活習慣の影響が関係していることもあります。
必要に応じて血液や呼気、便の検査を行い、原因を明らかにします。

これらの検査を組み合わせることで、逆流性食道炎・胃炎・胃潰瘍・腫瘍性疾患などを正確に診断し、最適な治療方針を決定することができます。

治療法と日常生活での対策

胸やけの治療は、薬による胃酸のコントロールと生活習慣の見直しを組み合わせて行います。
症状の原因や程度に合わせて、医師が適切な治療法を提案します。

①薬物療法（胃酸を抑える治療）

胸やけの主な原因である胃酸の逆流を防ぐため、以下のような薬を使用します。

多くの方がこれらの薬で症状が改善しますが、再発を防ぐためには生活習慣の改善も欠かせません。

②食事と生活の工夫

• 食後すぐに横にならない（少なくとも2〜3時間は間をあける）
• 脂っこい料理や辛い物、チョコレート、コーヒー、アルコールを控える
• 早食い・食べ過ぎを避け、「腹八分目」を意識する
• 就寝時は上半身を少し高くして寝ると逆流を防ぎやすくなります
• 体重が増えている方は、少しずつ減量を心がけましょう

③ストレスと喫煙の見直し

ストレスは自律神経の乱れを引き起こし、胃酸分泌を増やす原因となります。
また、タバコは食道の逆流防止機能を弱めるため、禁煙も重要な治療の一部です。

このように、薬と生活の両面からアプローチすることで、胸やけの再発を防ぎ、快適な毎日を取り戻すことができます。

港区・白金エリアで胸やけにお悩みの方へ

胸やけは、多くの方が一度は経験する身近な症状ですが、その背景には胃酸の逆流や食道の炎症など、治療が必要な病気が隠れていることがあります。
「市販薬を飲めば治るだろう」と思って放置してしまうと、症状が慢性化したり、食道の粘膜がただれて潰瘍や狭窄を起こすこともあります。

当院「白金麻布メディカル内科・内視鏡クリニック」では、消化器内視鏡専門医が胸やけや胃酸逆流の原因をしっかり調べ、鎮静剤を使用した苦痛の少ない内視鏡検査で正確な診断を行います。
炎症やびらん、食道裂孔ヘルニア、ピロリ菌の有無などを詳しく確認し、その結果に基づいて、薬物療法と生活習慣改善の両面から治療を進めます。

また、再発を防ぐために、食事・姿勢・就寝時間など日常の工夫についても具体的にアドバイスを行い、「症状を抑えるだけでなく、再び胸やけが起こらない体づくり」をサポートします。

「夜中に胸がムカムカして眠れない」「喉の奥が焼けるように痛い」など、小さな不快感でも早期の検査が安心につながります。

港区・白金・麻布エリアで胸やけや胃酸逆流にお悩みの方は、白金麻布メディカル内科・内視鏡クリニックへ。
正確な診断と専門的な治療で、胸のムカムカのない快適な毎日を取り戻しましょう。